フリーランスエンジニアのマイクロ法人|2024年に作った僕の判断ライン
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目次 6項目
フリーランスエンジニアがマイクロ法人を検討する目安は、売上1,000万円前後です。一般によく言われる目安で、僕の感覚もだいたい同じです。
僕は2016年にSIerを辞めて、フリーランスエンジニアとして独立しました。2024年にマイクロ法人(合同会社)を作り、いまは個人事業と法人の二刀流です。エンジニアの売上はすべて個人事業のままにしています。
この記事では、マイクロ法人とは何か・作るかどうかの判断ライン・メリットとデメリットを整理します。制度の話は国税庁や日本年金機構などの公式情報で確かめた範囲で書きます。そのうえで、僕が2024年に作ったときの判断と作ってから面倒だったことを実際の経験のまま書きます。
マイクロ法人を作るときにかかった費用と手順は、freee会社設立の費用と合同会社を作った記録にまとめています。
フリーランスエンジニアのマイクロ法人は売上1000万円前後が検討の目安
フリーランスエンジニアがマイクロ法人を検討し始める目安は、売上1,000万円前後です。売上が少ないうちに作ると、毎年の維持費のほうが重くなりやすいとされているからです。
そもそもマイクロ法人は、法律で決められた会社の種類ではありません。社長1人だけで従業員を雇わずに回す小さな法人を、一般にこう呼んでいます。会社の形としては、株式会社か合同会社のどちらかで作ることがほとんどです。
フリーランスエンジニアの場合は、個人事業をやめずにマイクロ法人も持つ「二刀流」で使うのがよくある形です。個人事業を法人に移す「法人成り」とは別の考え方で、この違いは次の章で説明します。
一般に言われる目安
マイクロ法人や法人化の目安としてよく挙がるのは、次の2つの数字です。
| 目安 | よく言われる理由 |
|---|---|
| 売上1,000万円 | 消費税の納税義務が免除されるかどうかの境目だから |
| 課税所得800万円前後 | 所得税は所得が増えるほど税率が上がるので、一定の所得から法人を使う意味が出やすいとされるから |
売上1,000万円について、国税庁は次のように説明しています。
その課税期間の基準期間(個人事業者の場合はその年の前々年、事業年度が1年である法人の場合はその事業年度の前々事業年度)における課税売上高が1,000万円以下である場合には、原則として、納税義務が免除されます。
ただしインボイス(適格請求書発行事業者)に登録していると、売上が1,000万円以下でも免除は受けられません。僕は個人事業のほうでインボイスに登録しています。このように消費税の扱いは登録の有無で変わるので、1,000万円という数字だけで判断しないほうが安全です。
課税所得の目安は、記事によって幅があります。役員報酬の額や家族構成、経費の中身で境目が動くからです。具体的な数字は、自分の申告書を税理士に見てもらって出すのが確実です。
僕が2024年に作ったときの判断
僕がマイクロ法人を作ったのは、2024年です。2016年に独立してから、それまではずっと個人事業だけでやっていました。
作ろうと思ったきっかけは、売上が上がる見込みがあったことです。このままだと社会保険料が高くてやばいと思いました。当時は国民健康保険と国民年金で、毎月6〜8万円くらい払っていました(記憶が定かではないので概算です)。ここから売上が増えて、さらに上がる予定でした。
売上がいくらを超えたから作った、というより、「このままだと社会保険料が上がり続ける」と考えたことがきっかけです。そのうえで振り返ると、二刀流を検討していいのは売上1,000万円前後くらいからかなと思っています。ただ、これは僕の感覚です。所得がいくらを超えたら作るべき、という線を引けるものではありません。
前から知っていたのに腰が重かった
マイクロ法人という仕組み自体は、前々から存在を知っていました。それでも腰が重く、実際に取り入れたのは、売上が上がる見込みが出てきた2024年です。
検討を先延ばしにしているあいだも、社会保険料は払い続けることになります。作るか作らないかを決めるだけでも、早めに自分の数字を確かめておくと判断しやすくなります。
この章で挙げた目安を、作る前に確かめる項目にまとめると次のようになります。全部に当てはまったとしても、作るべきだという意味ではありません。税理士に試算を頼むかどうかの目安として使ってください。

エンジニアのマイクロ法人は「二刀流」で使う
エンジニアのマイクロ法人は、個人事業と法人を両方持つ「二刀流」で使うのが一般的です。個人事業ではエンジニアの仕事を続け、法人では別の事業をします。

個人事業と法人で事業を分ける
二刀流では、個人事業と法人でそれぞれ別の事業をすることが前提になります。同じ仕事の売上を個人と法人に振り分けるような形は、問題になるおそれがあるとされています。
一般に、二刀流で気をつけるべき点として挙げられるのは次のようなことです。
- 個人事業と法人で、同じ事業を同じ取引先と分けて行わない
- 個人事業と法人で、口座と帳簿を分ける
- 法人の売上と経費を、帳簿で説明できるようにしておく
- 役員報酬を決めたとおりに毎月払い、記録を残す
法人の事業に実態があるかどうかは、個別の事情で判断が変わります。どう分ければいいかは、設立の前に税理士に確かめておくと安心です。
エンジニアの仕事は個人事業に残した
僕の場合、エンジニアの売上はすべて個人事業です。エージェントとの契約も個人で結んでいます。法人は、役員である自分の資産管理をする会社にしました。
エンジニアの売上ごと法人に移す法人成りも、検討はしました。それでもやめた理由は2つあります。
1つ目は、1人会社にいくらお金が溜まってもすぐには使えないことです。最終的に個人の口座に移すなら、最初からエンジニアの売上は個人のままのほうがいいと思いました。
2つ目は、自由度です。役員報酬という形でお金をもらうのもいいとは思います。ただ、自由度が下がるのでやめました。
法人成りと二刀流のどちらが合うかは、人によって違います。法人成りも含めて比べたい方は、フリーランスエンジニアの法人化で3つの形を並べて整理しています。
法人でやる事業の一般的な例
二刀流のマイクロ法人でやる事業として、一般によく挙げられるのは次のようなものです。
- 資産管理(自分の資産を法人で持って運用する)
- 不動産の賃貸
- 本業とは別分野のコンサルティング
- 執筆や動画編集などの制作の仕事
- 物販
どの事業でも、個人事業の仕事と中身がはっきり分かれていることが大切です。たとえばエンジニアの個人事業と同じ取引先から、同じような開発の仕事を法人で受けるのは避けたほうがいいとされています。
僕の法人は資産管理会社です。法人を作るときは、資産管理会社だと対応できないと税理士に断られることが続きました(この話は後で書きます)。事業の種類によって、相談先の見つけやすさも変わります。
マイクロ法人のメリット
マイクロ法人のいちばんのメリットは、社会保険料を抑えられる場合があることです。僕の場合、二刀流にしてから社会保険料は月6〜8万円くらいから月2万円強になりました。
社会保険料が下がる
マイクロ法人で社会保険料が下がる場合があるのは、保険料のもとが変わるからです。個人事業だけのときは国民健康保険と国民年金に入り、国民健康保険料は一般に前年の所得などをもとに計算されます。
法人を作ると、社長1人だけの会社でも健康保険と厚生年金に入ることになります。日本年金機構は、健康保険・厚生年金保険に必ず入る事業所を次のように説明しています。
株式会社などの法人の事業所(事業主のみの場合を含む)
法人で入る健康保険と厚生年金の保険料は、法人から受け取る報酬をもとに決まります。役員報酬を低めにすれば、個人事業の所得が増えても保険料は上がりにくくなります。これがマイクロ法人の基本的な考え方です。
僕は二刀流にしてから、協会けんぽと厚生年金を合わせて月2万円ちょっとになりました。前後の変化と仕組みの詳しいことは、マイクロ法人と個人事業主の二刀流に書いています。
一方で、厚生年金の将来の受け取りも報酬に見合った額になります。保険料が下がることだけで判断せず、将来の年金も含めて考えておくと安心です。
役員報酬の決め方
マイクロ法人の役員報酬は、社会保険料と税金の両方を見て低めに決めることが多いとされています。僕の役員報酬は月45,000円です。
この額にしたのは、マイクロ法人について調べたときに給与所得控除などを考えると45,000円が良さそうだと分かったからです。いくらが合うかは、家族構成や住んでいる地域・制度の改定で変わります。この記事では、僕の役員報酬以外の金額は扱いません。
役員報酬には、もう1つ決まりがあります。法人の経費(損金)にできる役員への給与は、定期同額給与などに限られています。国税庁は次のように説明しています。
法人が役員に対して支給する給与(注)の額のうち次に掲げる定期同額給与、事前確定届出給与または一定の業績連動給与のいずれにも該当しないものの額は損金の額に算入されません。
毎月同じ額を払う定期同額給与は、額を改定できる時期も決まっています。同じページでは、原則として「その事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3か月(中略)を経過する日」までにされる改定とされています。役員の職制上の地位の変更などの臨時改定事由や、経営状況が著しく悪化したことによる減額などの例外もありますが、思いつきで報酬を上げ下げできるものではありません。決める前に税理士と相談しておくと安心です。
経費と信用
社会保険料のほかに、マイクロ法人のメリットとして一般に挙げられるのは次のようなものです。
| メリット | 一般に言われる内容 |
|---|---|
| 給与所得控除 | 法人から受け取る役員報酬は給与所得になり、給与所得控除を差し引いて所得を計算する |
| 所得の分散 | 所得を個人と法人に分けることで、個人の高い税率がかかる部分を減らせる場合がある |
| 法人の経費 | 法人の事業にかかる費用は、法人の経費として計上できる |
| 信用 | 法人でないと取引しない相手がいる業種では、仕事の幅が広がることがある |
ただ、どれも効果が出るかどうかは事業の中身次第です。二刀流で法人を資産管理会社にしている場合は、エンジニアの契約は個人のままです。法人で取引先の信用を得る、という場面はあまりありません。
信用については、僕は逆の経験もしました。メガバンクやゆうちょで法人口座を開設できず、いまはネット銀行を使っています。資産管理会社だと事業の実態を証明しにくいのかもしれない、と僕は推測しています。法人を作れば自動的に信用が付くとは限りません。
マイクロ法人のデメリットと維持費
マイクロ法人のデメリットは、赤字でもかかる維持費と帳簿・申告が2つになる手間です。僕の場合、法人の維持費は年30万円を少し超えるくらいかかっています。
毎年かかるお金
マイクロ法人には、利益が出ていなくても毎年かかるお金があります。代表的なのが、法人住民税の均等割です。総務省は次のように説明しています。
法人税割は国に法人税を納めている法人、つまり黒字の法人だけが払うのに対して、均等割は赤字の法人も払わなければならないということです。
僕の法人では、均等割に加えて税理士費用(決算申告を含む)・会計ソフト・バーチャルオフィスの費用がかかっています。合わせて年30万円を少し超えるくらいです。なかでも一番大きいのは税理士費用です。
維持費は、法人を持っている限り毎年かかります。売上が小さいうちは、社会保険料や税金の差よりも維持費のほうが重くなることもあるとされています。自分の場合にどうなるかは、税理士に数字で見てもらってください。
帳簿と申告が2つになる
二刀流にすると、個人事業と法人で帳簿も申告も別々になります。個人は確定申告、法人は決算申告です。
僕の分担は次のとおりです。
| 個人事業 | マイクロ法人 | |
|---|---|---|
| 仕訳 | 自分 | 自分 |
| 決算資料の作成 | 自分 | 税理士 |
| 申告 | 自分(確定申告) | 税理士(決算申告) |
会計ソフトは、個人も法人もfreee会計
を使っています。個人と法人で同じソフトを使うと、操作を覚え直さずに済みます。使ってみた感想は、freee会計を個人事業主が使う理由に書いています。
帳簿のほかにも、法人ならではの細かい手間があります。僕の場合は、次のようなものです。
- 法人口座のネット銀行が社会保険料の引き落としに対応していないので、毎月振り込んでいる
- 社会保険料の支払い用紙がバーチャルオフィスに届くので、毎月取りに行っている
一つひとつは小さな作業です。ただ毎月のことなので、正直に言うと面倒です。
やめるときにも手続きがある
二刀流は、一度作れば終わりではありません。法人の事業が無くなったときや、個人事業の売上が下がって維持費に見合わなくなったときは、法人をどうするかを考えることになります。
法人は、使わなくなっても自然に消えるわけではありません。なくすには解散と清算の手続きが必要で、それまでのあいだは均等割などの維持費や申告の手間が続きます。作る前の段階で、やめるときの手順と費用も税理士に聞いておくと、後で慌てずに済みます。
僕はいまのところ二刀流を続けていて、やめる手続きをしたことはありません。
税理士に頼む範囲を決める
マイクロ法人の決算を自分でやるか税理士に頼むかは、作る前に決めておきたいことの1つです。僕は、法人の決算は税理士にお願いしています。
法人の決算処理は個人と違って複雑で、専門知識の無い自分がやるとまず間違えると思ったからです。ネットで調べても、そういう内容が出てきました。もう1つの理由は、税理士にお願いすることを経験としてやってみたかったことです。正直に言うと、なんかカッコいい気がしたんです。
実際に始めてみると、小さい事業なのでやりとりはそれほど多くありません。ただ、専門家にちゃんと見てもらっているという安心感はあります。
頼む範囲は人それぞれです。僕のように仕訳は自分でして決算だけ頼む形もあれば、記帳から任せる形もあります。費用と分担の考え方は、マイクロ法人の税理士に詳しくまとめています。
マイクロ法人を作る前に確かめること
マイクロ法人を作る前に確かめたいのは、自分の売上と社会保険料・相談できる税理士・設立の費用と流れの3つです。どれも、作ってから気づくと手戻りが大きいところです。
自分の売上と社会保険料を計算する
最初にやっておきたいのは、自分がいま払っている社会保険料を確かめることです。国民健康保険料は市区町村から届く通知に、国民年金保険料は日本年金機構からの案内に金額が書かれています。
法人で入る場合の保険料は、役員報酬の額と保険料率で決まります。協会けんぽの健康保険料率は都道府県ごとに違い、協会けんぽ「令和8年度保険料額表」で確認できます。
そのうえで、これから売上がどう動きそうかも考えておきます。僕の場合は、売上が上がる見込みがあったことが作るきっかけでした。いまの数字だけでなく、来年以降の見込みも並べておくと判断しやすくなります。
ここで出した数字から、マイクロ法人を作った場合の損得を自分で決めてしまうのはおすすめしません。税金・社会保険料・維持費をまとめて比べるのは、税理士に頼むのが確実です。
税理士に相談する
マイクロ法人を作るなら、設立の前に税理士に相談しておくと安心です。事業の分け方・役員報酬・決算月などは、設立のときに決めることが多いからです。
僕の税理士探しは、最初は苦労しました。最初はfreee経由で紹介してもらった税理士で、すぐ決まりそうになりました。ところが後日、資産管理会社だと対応できないと断られました。
その後は税理士のマッチングサイト経由で数人とチャットでやりとりしましたが、同じ理由で断られることが続きました。なんとか1人、対応してくれる税理士を見つけたのが今の税理士です。
マイクロ法人と一口に言っても、事業の中身によって対応できる税理士は変わります。問い合わせの最初に法人で何をするのかを伝えておくと、対応できるかどうかを早めに確かめられます。
マイクロ法人の相談先になる税理士を探している方へPR
税理士ドットコムは、税理士を探せるサービスです。僕自身は使ったことがありません。
公式サイトによると、コーディネーターが完全無料で税理士を紹介してくれます。紹介を断るのも自由です。会社設立についての情報もまとめられています。使う場合も、法人で何をするのかを最初に伝えておくと、対応できる税理士かどうかを早めに確かめられます。
内容は2026年10月7日に公式サイトで確認したものです。最新の情報は公式サイトで確かめてください。
設立の費用と流れを知る
マイクロ法人の設立には、登記などの法定費用と頼んだ専門家への報酬がかかります。僕はfreee会社設立を使い、freeeの中で司法書士にも頼みました。創立費は98,910円でした。司法書士への報酬も、たしかこの中に含まれていたはずです。
会社の形は合同会社です。会社を大きくする必要が無かったので、設立費用の低い合同会社でいいと判断しました。手続きでは、法務局・税務署・年金事務所に何度か行っています。全部で、たしか1〜2か月くらいかけてやりました。
設立の流れと費用の内訳・合同会社と株式会社の違いは、freee会社設立の費用と合同会社を作った記録に詳しく書いています。
まとめ:売上の見込みと手間を並べて決める
フリーランスエンジニアのマイクロ法人は、売上1,000万円前後が検討の目安です。僕は2024年に作り、エンジニアの売上は個人事業に残す二刀流にしました。
もう一度、僕の判断と今の形をまとめます。
- 作ったきっかけは、売上が上がる見込みがあり社会保険料が高くてやばいと思ったこと
- 法人成りは検討したが、お金の使いやすさと自由度を考えてやめた
- 法人は資産管理会社で、役員報酬は月45,000円
- 社会保険料は月6〜8万円くらいから月2万円強になった
- 法人の維持費は年30万円を少し超えるくらい。個人の申告は自分、法人の決算は税理士
- 法人口座の開設や毎月の振り込みなど、細かい手間も続いている
マイクロ法人は、社会保険料の数字だけで決められるものではありません。維持費と毎年の手間がかかり、法人の事業に実態を持たせる必要もあります。作るかどうかは、売上の見込みと手間を並べたうえで決めるのが大切です。
税金や社会保険料は、所得・家族構成・住んでいる地域で変わります。マイクロ法人を作るかどうかや事業の分け方は、税理士や社会保険労務士に相談してから決めてください。
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